特集 2021/11/08
Go.Ro.Ne.Vol48掲載

松井玲奈が初単独主演映画への思いを語る「自分の心の内を伝えてほしい」

役者として連続テレビ小説「まんぷく」「エール」(NHK総合ほか)や「プロミス・シンデレラ」などに出演するほか、「カモフラージュ」「累々」などを手がける小説家としても活躍中の松井玲奈。

11月26日(金)公開の映画『幕が下りたら会いましょう』は、松井の映画初単独主演作として注目度が高まっている。実家の美容室を手伝いながら、売れない劇団を主宰する劇作家の麻奈美(松井)。劇団員の結婚祝いで集まってバカ騒ぎをしていたある夜、妹の尚(筧美和子)が資材置場で亡くなった。その日、尚からの電話に出なかった麻奈美は複雑な思いを抱えてしまう。過去と現実、さまざまな出会いと再会の“揺らぎ”の中で麻奈美が見つけたものは…。今回、松井に本作に懸ける思いを、撮影中のエピソードを交えながら語ってもらった。

(C) avex entertainment Inc

――映画初単独主演作となりますが、オファーがあった時、どんな気持ちでしたか?

「映画で単独で主演させていただくことは、1つの目標でもありましたので、とても嬉しくありがたかったです。大切に演じ、作品ともじっくりと向き合いたいなって思いました。割と早い時期、台本の第1稿ができたくらいから、監督さんやスタッフの方たちと一緒に作品に携わらせていただけたので、撮影に入る前の準備段階で物語としっかり向き合うことができました」

――最初に台本を読んだ時の印象も聞かせてください。

「プロットの段階から、両親の違う姉妹の物語で、“家族を再生していく”ということが強く打ち出されていました。そこから1本の映画にするために“観る方に何を伝えたいのか”とか“作品の軸を何にしていくのか”ということを監督さんたちとたくさん話をしました。私自身、物語を書くということもしていますけど、このように脚本の段階から入って、いろんな方と話し合って物語を作っていくという経験はなかったので、すごく勉強になりましたし、“映画ってこういうふうに作られていくんだな”って、過程を知ることができたのも嬉しい時間でした」

――松井さんから見て“麻奈美”はどういう人物ですか?

「すごく内にこもっている人で、感情をあまり表に出さないというか、感情を表現する時に“ムスッとする”というのが最初に出てきてしまう女性だと思いました。怒っている時はもちろん、嬉しくても悲しくても。それは本読みの段階でも監督と話し合いましたし、撮影中も『もっとぶっきらぼうでいいです』とか『もっと感情を出さないように言ってほしい』とか、すり合わせながら作っていったので、演じながら“麻奈美”という人の感覚をつかんでいくことができました。確執のある母親と向き合う時や、妹の死と直面した時に、彼女の内側で起っているものが物語の中でどう変化していくかを表現するのは、難しくもあり、楽しくもありました。麻奈美を演じる上で、衣装の影響も大きかったです。実家にいる時はシンプルな服を着ているけど、東京に行った時は妹の尚の服を着ていたりして、彼女にとって非日常的な服を着ていることでアンバランスさも表現できましたね。キレイな服を着ているのに化粧をしていないとか。そういう見た目とか、着る物や持ち物からも麻奈美が作られてる感じがして、面白いなと感じていました。尚の服を着ている時は違和感があって、自分の服を着た時は本来の自分に戻った感覚がありましたから」

――妹・尚役の筧美和子さん、母親・京子役のしゅはまはるみさん、劇団仲間・早苗役の日高七海さん、それぞれ麻奈美との関係性や距離感が重要な人物ですが、これまでに共演は?

「皆さん、初めて共演させていただきました。筧さんとは同じシーンが少なくて残念でしたけど、数少ない姉妹のシーンはとても重要なシーンだったなと思います。ちょっと気まずい雰囲気があって、距離感がある2人なんですけど、髪を触ってあげることで、ある意味“近さ”を表現できたと思いますし、麻奈美が尚をちゃんと妹だと思っていることが表せたんじゃないかなって。しゅはまさんが演じた母親と麻奈美は、本当の親子で似た者同士。2人とも素直になれず、ぶっきらぼうという軸があって、私自身、しゅはまさんの演じる姿に大きく影響されました。思ってもいなかったところで感情がグッと込み上げてきたり、お芝居を引っ張ってもらった部分がたくさんありましたし、ご一緒させていただいて本当に楽しかったです。日高さんが演じる早苗は、常に一緒にいる親友のような存在。日高さんの方が小柄なのに、私をおんぶするシーンがあったんです(笑)。これも尚とのシーン同様、“触れる”ことによって2人の距離がグッと近づいた感じがして、すごく印象に残るシーンになりました」

――完成した作品を観た感想も教えてください。

「筧さんが演じる尚が、すごく印象に残りました。それは、尚自身がスクリーン上に描かれてなくても、物語を通して尚の存在がずっと根底に走っているからだと思います。だからこそ、要所要所で尚が出てきた時、なんだかホッとするような気持ちになるんです。姉妹と家族の物語であり、麻奈美は自分自身と向き合って新しい一歩を踏み出そうとする瞬間の物語なんだなと思いました」

――作品ごとにいろんな役を演じられていますが、今後演じてみたい役は?

「極悪非道な役はやってみたいですね。悪役は楽しいので(笑)。あと、役ではないんですけど、自分自身で脚本を書いてみたい気持ちもあります。セリフとト書きだけで説明しないといけないので、きっと小説よりも難しいんじゃないかなって思いますが、いつか映画の脚本を1本書けたらいいなと思っています」

――最後に、松井さんの「お部屋のこだわり」を教えてください。

「家具ですね。数年前に、木製の大きなダイニングテーブルを購入しました。1つ1つ天板のデザインが切り出し方によって変わってくると聞いて、木製の家具のそれぞれの表情が違っているのが面白いなって。それがきっかけで、家具は木製の物を買うことが多くなりました。あとは、籐のカゴとか。うちの猫が寝ているカゴの素材は籐です。そういう自然のものが部屋にあると気持ちが落ち着きますし、使えば使うほど年季が入って味わいが増してくるので、それも楽しんでいます」

――映画を楽しみにされている皆さんに見どころとメッセージをお願いします。

「私自身、この作品に関わって強く思ったのが“会いたい人にはその時に会うべき”だということでした。会えなかったとしても、会いたいという気持ちや、今自分が思っていることを伝えることはいいことだと思うんです。この作品を観て、皆さんそれぞれ感じ方は違うかもしれませんが、自分の大切な人、思いを伝えたい人に、自分の心の内を伝えていただけたら嬉しいなと思います」

取材・文=田中隆信 撮影=神藤剛

インフォメーション

映画『幕が下りたら会いましょう』

2021年11月26日(金)より全国順次公開
カテゴリー