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このままでは地球がなくなる? 食品ロス問題解決に向けて、私たちができること

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今、地球上で大きな問題となっている食品ロス。世界では、年間およそ13億トンもの食材が捨てられています。食べ切れないほどの食材が作られ、捨てられる一方で、飢餓に直面している人は8億人以上いると言われており、非常に大きな社会問題です。また、食品ロスは環境問題にも大きく関係しています。すでに地球は危機的状況に陥っているという話も…。

今回は、食品ロスジャーナリストとして活動している井出留美さんにお話を伺いました。食品ロスって何が問題なの?食品ロスをなくすために、今すぐ私たちができることは?詳しく教えていただきました。

食品ロスって何が問題?大きな“三つの問題点”

――そもそも食品を捨てることは「もったいないからよくない」という認識は、当然誰もが持っています。それ以外に、食品ロスは何が問題なんでしょうか?

井出さん「食品ロスは、大きく分けて三つの問題点があるんです。まず一つ目は環境に負担をかけるということ。食べ物を捨てると生ごみになりますが、生ごみの80%以上が水です。水は燃えないので、燃えにくいものを燃やすためにエネルギーとお金がかかります。一般廃棄物を処理するために、どれくらいのお金がかかるか知っていますか? 1年で2兆円以上かかっています。一般廃棄物は、約40%以上が生ごみなんです。つまり、1兆円以上が食品を燃やすために使われている計算です。ごみを燃やしたり埋めたりすると温室効果ガスが出て、環境に負担がかかるのは想像がつくと思います。自然災害が起こりやすくなったり、農産物が育たなかったり、人の命や健康も脅かされてしまいます」

――ちなみに、日本は世界で5番目に温室効果ガスを出している国なんだそう(1位から順に中国、アメリカ、インド、ロシア、日本)。国土面積の大きさを考えると、かなり多くの温室効果ガスを出していることになりますね。

井出さん「二つ目の問題点は、経済的損失です。ごみを処理するためのコストがかかるのはもちろん、食べ物そのものもお金ですよね。栽培して、運んで、卸して、販売して…この流れでたくさんのお金がかかっています。日本では年間約523万トンの食品ロスを出していますが、これは5兆円超えのコスト換算です」

――5兆円の中には、働いている人の人件費は含まれていません。働いた時間までも無駄にしていると考えると、なんてもったいない…。

井出さん「三つ目の問題点は、社会的なチャンスを失ってしまうということ。もし食品ロスのために使われたお金が手元にあったら、何人の人を雇用することができたか?何人が奨学金を受け取れたか?いくつ病院が建てられたか?…そう考えていくと、福祉や雇用、教育、医療など、いろんなチャンスを失っていることになるんです」

都内の炊き出しには、食べ物を求めて500人以上もの人が並ぶ。食品ロス問題は「食べるチャンス」も奪っているといえる

すでに地球は危機的状況!このまま食品ロスが進むと一体どうなるの?

――食品ロス問題が環境問題に大きく関わっていることはすでにお伺いしました。今後もし食品ロス問題が改善されなかったら一体どうなってしまうんでしょうか?

井出さん「実は、もうとっくに地球の限界を超えています。ごみを燃やすための資源を使い過ぎて、もう地球は一つでは足りない状態です。もし仮に、世界の人が日本と同じ暮らしをしたら、地球が2.9個必要です。昨今の異常気象は温室効果ガスが大きな原因といえます。食品ロスが改善されないと、大雨などの自然災害が起こりやすくなります。それに、ここ最近の災害級の暑さも温室効果ガスが関係しています。これは本当に深刻な状況で、“気候危機”という言葉が生まれています。100年に1度、千年に1度の災害が現在世界中で起こっていて、私たちの健康も脅かされています。“気候危機は医療危機”です。食品ロスが改善されなければ、この動きはますます加速していきます」

 

コンビニでは、年間約468万円の食料を廃棄している(中央値、2020年公正取引委員会発表)。これは民間の給与取得者の平均年収(443万円、国税庁)よりも高い額だ

節約にもつながる!今日からできる食品ロス解決アクション

――食品ロス問題で、地球全体が危機的状況にあることが分かりました。今すぐ私たちができることはなんでしょうか。

井出さん「一番できることは、シンプルに“買い過ぎない”ことです。勝負は買い物前!冷蔵庫や戸棚の中をしっかりチェックして、どんな食べ物がどれくらい残っているかを把握してから買い物リストを作りましょう。買い物リストを作ることで、無駄買いや重複買いをなくせます。また、冷蔵庫がパンパンな家庭も多いですが、何がどこにあるか分からなくなり、在庫管理ができなくなります。冷蔵庫は7割くらいの収納量で、どの棚の中も見えるくらいに収めましょう。無駄買いを防ぐだけでなく、食材も冷えやすく、電気代も安く済んで一石二鳥です」

――コロナ禍の初期には、いろんな国で家庭の食品ロスが減ったそうです。理由はシンプルで、買い物が制限されたから。たとえばイタリアでは一度にスーパーに入る人数や時間が制限されたので、買い物する前にあらかじめ決めておく必要があり、無駄買いが減ったとか。興味深いデータです。

井出さん「他にもできる対策があります。家庭で捨てられる食品ナンバーワンは野菜です。使い切れなくて捨ててしまう方も多いと思いますが、たとえば青菜などの野菜は市販の保存袋に入れるのがおすすめです。裸のまま冷蔵庫に入れておくより、かなり持ちます。また、一人暮らしで使い切れないようなら多少割高でもカットされた必要な分だけ買いましょう」

井出さんいわく「野菜を制する者が食品ロスを制する」!

――野菜ごみを減らすためにできることはまだまだたくさんありそうですね。

井出さん「干すとおいしくなる野菜もあります。例えばキュウリを輪切りにしてザルに広げ、外に置いておくとほど良く水分が抜けます。ごま油やお酢、醤油に漬けるとおいしいですよ。それから、モヤシやニラなど日持ちしない野菜は、使うその日に買ってすぐ使うようにしましょう」

――また、野菜の皮などを煮出して作る“ベジブロス”もおすすめだそうですね。

井出さん「タマネギの皮や、ブロッコリーの硬い部分は捨ててしまう方も多いと思いますが、これがおいしい食材になるんです。余り野菜を煮出してできたスープ(ベジブロス)は、野菜のだしが効いていておいしいです。玄米カレーやリゾットなど、いろいろな料理に使えますよ」

――井出さんは2017年から家庭用の生ごみ処理機を使っているそうですが、食品ロス改善になっただけでなく、とても快適なキッチン環境になったとか。

井出さん「生ごみ処理機を導入したことで、7割ほどごみを減らすことができました。ごみの水分を乾かしてからコンポストに入れています。夏の時期、重たいごみ出しの面倒くささや、生ごみの臭いや小バエの発生にうんざりしている方も多いと思いますが、この悩みから解放されました。臭いや虫の発生源は水分ですから。ちなみに、家庭用の生ごみ処理機を購入すると全国60%以上の自治体で補助金が出るんですよ。自治体によって上限額が違うので、お住まいの地域の自治体に確認してみてくださいね」

無駄なく食品を使い切れると、とっても気持ちがいいもの。食品ロス削減のために、私たちが今すぐできることはたくさん。今日から買う前に、捨てる前に少し立ち止まって、「食品ロス問題」を考えてみませんか。

取材・文=ruum編集部

井出留美

ライオン、JICA海外協力隊、日本ケロッグを経て独立。日本初のフードバンクの広報を委託されるなど食品ロス問題に取り組み、「食品ロス削減推進法」成立にも協力。著書に『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書)、『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』(マガジンハウス)、『捨てられる食べものたち』(旬報社)ほか。

インフォメーション

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