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部屋干し臭は“干し方”より“洗い方”!洗濯王子が教える目からウロコの洗濯術

目次

「部屋干しすると、どうしても洗濯物が臭う……」そんな悩みありませんか?じつはそのイヤな臭いの原因は、“干し方”ではなく“洗い方”にあるかもしれません。どうすれば汚れをしっかり落とし、部屋干し臭や生乾き臭を防げるのか。見落とされがちな洗濯の基本を、洗濯王子こと中村祐一さんが徹底解説。今日からできる解決法をお届けします。

部屋干し臭や生乾き臭が起こる意外な原因とは?

雨の日の室内干しや、曇り空のもとの外干し。ていねいに洗ったつもりでも、なるべく早く乾くよう工夫したつもりでも、どうしても洗濯物にイヤなニオイが残ってしまう──そんな経験、ありませんか?その原因について、洗濯のプロ・中村さんはこう語ります。

「部屋干し臭や生乾き臭の最大の原因は、じつは汚れがしっかり落ちていないことなんです。菌が原因という話をよく耳にしますが、正確には菌そのものが臭うわけではありません。洗濯で落としきれなかった汚れをエサにして菌が繁殖し、その菌が出す排泄物が、あのイヤな臭いの正体です」(中村さん)

部屋干し臭や生乾き臭の原因は、洗濯で落としきれなかった皮脂や汗、たんぱく質などの汚れにあります。洗濯物が湿った状態が長く続くと、こうした汚れをエサにして雑菌が繁殖します。この菌が活動する過程で出す代謝物が、独特なイヤな臭いの正体なのです。

つまり、臭いの元は菌そのものではなく、菌が汚れを分解・代謝する過程で生じる物質。言い換えれば、菌のエサとなる汚れが衣類に残っていなければ、菌が増殖しにくくなり、結果としてイヤな臭いも発生しづらくなるので、“汚れをしっかり落とすこと”こそが、部屋干し臭や生乾き臭を防ぐためのいちばんの近道ということになります。

洗いは「3つの量」が鉄則!

「でも、洗濯機の設定通りにしているんだから、きちんと洗えているはず…」そう思われるかもしれませんが、洗濯機の設定にこそ意外な落とし穴があると中村さんは話します。

「最近の洗濯機は節水を前提に設計されていて、洗浄力の面では十分とは言えないことがあるんです。水量やすすぎの回数が少なくなっていて、結果として汚れが落ちきらないケースが見られます。また、洗濯機の容量に対して衣類を入れすぎてしまうのも、よくある問題です。気持ちはわかるのですが、洗濯物が多すぎると、洗濯槽の中で洗濯物が動きにくくなり、しっかり汚れが落とせなくなってしまいます」(中村さん)

そこで基準になるのが、「3つの量」と「すすぎ3回」という洗濯の基本です。

「『3つの量』というのは、衣類の量・水の量・洗剤の量のこと。このバランスを保つことが、汚れを落とすための基本です。縦型洗濯機なら、衣類の量は洗濯槽の7割までにして、水は満水に。ドラム式なら衣類を5割程度に抑え、水の量は『高め』や『多め』の設定にして、すすぎは『注水すすぎ』に。さらに、洗剤の量はパッケージに記載された規定量を守るといいです」(中村さん)

衣類の量は少な過ぎても汚れ落としの効率が悪くなったり、細かく洗うとその分コストがかかるので、ある程度洗濯物がたまったタイミングで洗うのがおすすめ。

「洗濯物をためておくことについては、あまり神経質になる必要はありません。週に1度の洗濯でも問題ありません。ただし、衣類が湿ったままだとカビが発生しやすくなるため、洗うまでの間は湿ったままにせず保管しておくことが大切です」(中村さん)

水の量は、衣類の重さの10倍以上が目安。例えば、縦型洗濯機で洗濯槽の7割ほど衣類がある場合、満水にするとそのバランスを保つことができます。

また、洗剤の量を多くれば洗浄力が上がるというわけではなく、規定量でOK。逆に、少なすぎると汚れ落ちが不十分になるうえ、一度離れた汚れが再び衣類に戻ってしまう“逆汚染”が起こることもあるので注意が必要です。

「すすぎ3回」で汚れをしっかり除去!

一方、すすぎについては、縦型でもドラム式でも「3回」が基準となります。

「洗濯では、まず洗いの工程で洗剤を入れ汚れを落とし、次に、すすぎで洗剤や残った汚れを水で薄めながら洗い流します。ところが、すすぎが1回や2回だけだと、洗剤や汚れが十分に薄まりきらず、衣類に残ってしまうことがあるんです。そうなると、衣類に残った汚れがニオイの原因になってしまうことも。私たちプロの現場でも、すすぎ3回を基本にしています。色褪せが気になる色物は2回にするなど調整しますが、タオルや下着、普段着などで、白さや衛生が大事なものは、特にすすぎ3回はマストです」(中村さん)

現在、家庭用洗濯機は「すすぎ2回」が標準設定になっていることが一般的ですが、これではすすぎが足りないということになります。また、「すすぎ1回でOK」とうたう洗剤も増えていますが、「最近の洗剤に多い中性の洗剤は、少量衣類に残っても影響が出にくいですが、それとは別に汚れ自体がしっかり落ちていないことが問題」と中村さんは言います。

「『3つの量』と『すすぎ3回』を守ると、洗濯機や洗剤が本来持っている働きを十分に発揮することができます。そうすれば、梅雨どきの部屋干しでも、イヤなニオイを防ぐことができます。よく『どの洗濯機や洗剤がいいか』と聞かれますが、じつはいまお使いのもので十分。意識すべきは、問題が洗い方そのものにあるということなんですよね」(中村さん)

洗い時間と洗濯ネットにもひと工夫

「3つの量」と「すすぎ3回」を守ったうえで、さらに見直してほしいのが「洗い時間」。

「汚れをきちんと落とすためには、最低でも10分程度の洗い時間が必要です。そこから20分くらいまでは洗浄力が高まっていくので、目安としては15分ほど洗うのが理想的です。洗濯機の標準コースの洗い時間は、それより短く設定されていることも多いのですが、プロの現場ではこれが一般的な感覚です」(中村さん)

もう一つ気をつけたいのが、洗濯ネットの使い方。

「普段の洗濯では、基本的にネットは不要です。というのも、ネットに入れると汚れが落ちにくくなってしまうからです。『風合いを守りたい』『形崩れを防ぎたい』という理由で使う方もいますが、実際のところ、ネットでは根本的な防止にはならないことが多いです。ただし、ストッキングのように絡まったり引っかかりやすいものは、ネットの使用が有効です」(中村さん)

一方、この洗い方をしておけば、干し方はそこまで神経質になる必要はなくなるといいます。

「ニオイ対策としては、基本的にしっかり洗えていれは、ざっくり干すだけでも大丈夫です。ただ、早く乾かしたい場合には少し工夫を。ポイントは、“表面積を広げること”と“空気を動かすこと”。たとえばシャツなら、前身ごろを開いて重なりを減らすだけで、乾きやすくなります。また、湿度が高いと乾きにくくなるため、換気や除湿機を使うなどして湿気を逃がすのもおすすめです。扇風機やサーキュレーターで洗濯物に風を送るのも効果的ですよ」(中村さん)

衣類の寿命が延び節約にも!

中村さんが推奨する洗濯方法を実践すれば、汚れをしっかり落とし、部屋干し臭や生乾き臭を防ぐだけでなく、衣類の寿命が延びるといううれしいメリットもあります。

「毎日時短モードや節水モードで洗っていると、衣類が黒ずんだり黄ばんだり、ニオイが気になってくることがあります。その結果、肌着やタオルを半年〜1年で買い替えている方も少なくありません。でも、しっかり洗って清潔に保てれば、買い替えのタイミングは3年、5年と延ばすこともできます。そう考えれば、水道代や電気代が少しかかったとしても、長い目で見ればむしろ経済的なんです」(中村さん)

また、この洗濯法なら、繊維の奥に入り込んだ蓄積汚れや蓄積臭、それが原因で起こる部屋干し臭や生乾き臭まで、しっかりケアできます。ただし、これらは一度の洗濯で落ちるとは限らず、2回、3回と洗濯を繰り返すうちに、改善されていくものもあるのだそう。

「シミもそうですが、『1回で落としたい」と思うものですよね。でも実際、プロでも1回で完全に落とすのは難しいことが多いんです。1回の洗濯で落とせる汚れの量には限界があります。軽い汚れであれば1回で十分ですが、蓄積汚れは、何層にも重なった汚れのイメージ。2回、3回と繰り返し洗うことが大切なので、諦めずに続けてみてください」(中村さん)

それでもニオイが落ちない場合には、つけ置き漂白やお湯洗いが効果的だといいます。

「たとえば、漂白剤を使ってつけ置き洗いをして、除菌するのも効果的です。もう一つ、40度前後のぬるま湯を使うのもおすすめです。体から出る皮脂汚れは、体温に近い温度で溶け出しやすくなるので、洗浄力がより高まります。ぜひ、ぬるま湯での洗濯も試してみてください」(中村さん)

取材・文=杉原由花 イラスト=ヨシカワミノリ

教えてくれたのは

中村祐一

長野県伊那市のクリーニング会社、芳洗舎の三代目。「洗濯から、セカイを変える」を信念に、洗濯を通じてより良い暮らし方を提案し、衣生活の革新に取り組んでいる。“洗濯王子”の愛称で親しまれ、NHKでの講師出演や『日本経済新聞』での連載をはじめ、各種メディアにも多数登場。2024年より、災害時の洗濯支援を行うチーム「DSAT(Disaster Sentaku Assistans Team)」を立ち上げ、クリーニング師の仲間とともに支援活動にも尽力している。

 
 

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