
エアコンを上手に使って省エネ!専門家によるエアコン“効率アップ”術
猛暑が続き、エアコンが欠かせない毎日が続いています。熱中症予防のためにも、上手に活用していきたいですね。エアコンの効率的な使い方、節電方法についてはSNSでも多くの情報が広まっていますが、なかには間違っているものも少なくありません。今回は、エアコンのプロフェッショナルである東芝エルイーソリューション株式会社 商品部の沼尻亨さんに、正しい“効率アップ術”を教えていただきました。
フィルター掃除は「1か月に1回でじゅうぶん」と思っていませんか。しかしエアコンをフル活動させるハイシーズン中は、2週間に1度のお手入れが基本です。
「当社の試験(※)では、フィルターのお手入れをせずに4カ月間冷房運転を続けた場合、約11%も電気代がアップすることがわかりました。エアコンは室内機の上から空気を吸い込み、冷やした空気を排出しています。その通り道がホコリでつまってしまうと冷房効率が下がり、余計なパワーが必要になってしまうのです」と沼尻さん。
節電には、できるだけこまめな掃除が有効。フィルターのほこりは掃除機で吸い取ったあと、やわらかいたわしなどでやさしく水洗いし、じゅうぶんに乾かしましょう。
(※)東芝ライフスタイル㈱調べ
夏が来るたびに話題となる“エアコンつけっぱなし論争”。エアコンをこまめにオンオフせず、つけっぱなしにしておいたほうが節電につながる…という説は本当なのでしょうか。
「外気温や室内気温によってエアコンにかかる負荷は大きく変わるので一概には言えませんが、近所に30分~1時間程度外出する程度なら、つけっぱなしの方が電気代を抑えられる場合が多いといえます」(沼尻さん)
エアコンは、室温と設定温度との差が大きいほど、より多くのパワーと消費電力を必要とします。設定温度に到達した後はその室温を維持すればよいので、さほど大きなパワーは必要としないそう。
「特に真夏はエアコンをオフにするとすぐに室温が上がってしまい、設定温度に下げるまでに多くのパワーを必要とします。そのため、少しの外出であればつけっぱなしにして室温を維持させておいた方が、電気代を抑えられるケースが多いのです」(沼尻さん)
比較的涼しい日や夜間、また外出時間が長くなるような場合では、つけっぱなしよりもこまめにオフにした方が節電につながりやすい傾向にあるよう。その日の気温や外出時間によって、使い分けるとよいでしょう。
各エアコンには、部屋の大きさに応じた畳数(部屋の広さ)が定められています。「8~10畳」と記載されている場合は、木造住宅で8畳、鉄筋コンクリート造りで10畳が目安。電気代節約のためには“小さめのエアコンを選んだほうがよい”と思っている方も多いようですが、これは誤解です。
「部屋の大きさにそぐわない小さめのエアコンを設置した場合、そのエアコンが本来想定している能力よりも大きな電力が必要になってしまいます。部屋がなかなか冷えない、暖まらないといった現象が起きやすくなるほか、空気の循環がじゅうぶんにできず温度ムラも発生しやすくなります。逆に小さな部屋に極端に大きなエアコンを設置してしまうと、温度変化が激しすぎたり、風量が強すぎたりと不快感につながることも。無駄に電気代がかさむ場合もあります」(沼尻さん)
畳数はあくまで目安。たとえばマンションの最上階で熱の影響が強い場合はワンランク大きい機種にしたり、北側の和室で冬の冷え込みが厳しい部屋は暖房性能が高い機種にしたりと、住環境に応じてエアコンを選定するとより快適に過ごせます。

窓からの入射熱を抑えることが、夏の省エネ運転のポイントのひとつです。
「日当たりがよく、直射日光が直接差し込む部屋では、遮熱カーテンやブラインド、すだれを併用して熱の侵入を減らしましょう。部屋の温度上昇をある程度抑えられます。屋外でヘチマやゴーヤなどつる性の植物を育てて直射日光を防ぐ、“緑のカーテン”も効果的。ただし、室外機の前面には空気の排出口、後面には吸込み口があります。緑のカーテンを設置する場合は、これらの空気の通り道をふさいでしまわないよう気をつけましょう。ホームセンターで販売されているエアコン室外機用の棚にも、まれに空気の通り道をふさいでしまうデザインのものがありますので注意してください」(沼尻さん)
エアコンから出る冷たい空気を効率よく循環させることも、省エネ運転のポイント。冷たい空気は下に、温かい空気は上に滞留しやすい性質を持つため、扇風機やサーキュレーターを併用して室内の空気を撹拌すれば、ムラなく部屋を冷やすことができます。このとき、扇風機やサーキュレーターからの風が上向きになるように設置すると効果的です。
毎年新しいモデルが発売されているエアコン。新しいものほど省エネ機能がアップしています。内閣府の消費動向調査(令和7年3月)によると、エアコンの平均買替え年数は約14年。たとえば東芝製のハイエンドモデル(DRシリーズ)の14畳用で、最新の2025年モデルと14年前(2011年)のモデルの目安電気代を比較すると以下のように。同じ使い方をした場合でも、新しいモデルだと年間で約7,000円の電気代節約になります。

「10年以上使用したエアコンは、部品の劣化等により性能低下が進んでいる可能性も。エアコンは決して安い買い物ではありませんが、ランニングコスト(電気代)も相応にかかることから、適切な買い替えタイミングを図ることが重要です」(沼尻さん)
現在販売中のエアコンは、資源エネルギー庁が定めた「グリーンマーク」「オレンジマーク」で性能がラベリングされています。もっとも新しい2027年度の省エネ基準で、達成率が100%以上と高い省エネ性のあるものには「グリーンマーク」が表示されています。また新旧のエアコンの電気代は、環境省の運営する「しんきゅうさん」でも比較できます。購入を検討の際にご活用ください。※
環境省は、快適性を損なわない省エネとして、夏の室温を28度にすることを推奨しています。これは、エアコンの設定温度ではなくあくまで室内の温度。健康のためにも、部屋に温度計を設置してこまめにチェックしたいですね。
「エアコンの使用にあたり、もっとも省エネに貢献できるのが設定温度の調整です。一般財団法人省エネルギーセンターの調査によれば、エアコンの設定温度を1℃上げるだけで、消費電力量を約10%も削減できるとされています」(沼尻さん)
近年は猛暑の影響で、熱中症予防の観点から睡眠中もエアコンの使用が推奨されています。睡眠モードなどを上手に活用しましょう。
省エネのためには、適切なエアコンの設置台数も重要。たとえば、部屋の扉を開け放して2部屋を1台のエアコンで冷やすよりも、一部屋に1台エアコンを設置したほうが無駄な電気代を使用せずにすみます。冷蔵庫と同じで、部屋の開閉はできるだけ少なくし、部屋の広さにあった適切なエアコンを使用することが基本です。エアコン選びの参考にしてください。
取材・文=植木淳子