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【週末エンタメ】人気作「眼の壁」が初の連ドラ化!小泉孝太郎が体現する松本清張の世界

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1957年から現在に至るまで65年間連続で映像化され続け、約500本もの映像作品が作られてきた松本清張の小説。社会派ミステリーと評される物語の根底には、「人間の本質」という普遍的なテーマが据えられ、いつの時代も人々の心をつかんできた。

そしてこのたび、清張の没後30年というタイミングで、人気作「眼の壁」を小泉孝太郎主演で初めて連続ドラマ化した「連続ドラマW 松本清張『眼の壁』」が、WOWOWプライムにて6月19日(日)より放送開始となる。

社会派ミステリーの金字塔「砂の器」に代表される清張作品の魅力

42歳にして作家デビューを果たした清張。遅咲きにもかかわらず40年の作家生活で残した作品数は長編、短編合わせて1,000編以上にも上り、関心の赴くままに執筆された作品は、推理小説を中心に時代小説やノンフィクションに至るまで多岐にわたる。

芥川賞を受賞した「或る『小倉日記』伝」が、もともとは直木賞の候補作としてノミネートされていたという逸話もあるように、分類不可能な作家だった清張だが、「内容は時代の反映や思想の照射を受けて変貌を遂げてゆく」という主張が示すように、多くの作品に共通するのは、社会的な背景が徹底的なリサーチによって盛り込まれている点だ。

さらにその根底にあるのは名声、地位に固執する欲望や愚かさ、差別や貧困によって引き起こされてしまう事件など、人間の本質的な部分。例えば、1974年の大ヒット映画でも知られる名作『砂の器』は、ハンセン病差別を発端とする悲劇が紡がれた。

社会的な背景を題材としているものの同時に普遍的な要素もあるため、どんな時代でもアレンジしやすく、ひとつの作品でも繰り返し映像化されてきた。

骨太な作品を連発してきたWOWOWが名作を連ドラ化

小泉孝太郎が演じるのは、ウキシマ電業製作所の経理課長・萩崎

『眼の壁』は1957年に発表された社会派の長編推理小説で、『点と線』と並ぶベストセラー。資金繰りに苦しむ電機メーカーを襲った巨額の詐欺を巡って、事件に巻き込まれた経理社員が裏に潜む陰謀に挑むという内容で、1958年には一度、映画化もされている。

映画界出身監督や実力派俳優を起用するなど、制約に捉われないドラマ作りで気骨のある作品を生み出してきたWOWOWの「連続ドラマW」プロジェクトとして、監督にハリウッドの現場も知る内片輝、主演に小泉孝太郎を迎え、物語の舞台を90年代のバブル末期に移し、今回初めて連続ドラマ化された。

1990年、資金繰りに苦しむウキシマ電業製作所の経理課長・萩崎(小泉)は、部長の関野(甲本雅裕)と共に融資交渉に奔走。資金のめどが立った矢先、関野が2億円の手形詐欺に遭い、姿を消してしまう。経営陣は体面を繕うため事件の隠蔽(いんぺい)を図るが、萩崎は恩人でもある関野の汚名をすすぐべく新聞記者の友人・村木(上地雄輔)の力を借り、真相究明に乗り出していく。

事件の謎に迫るうちに、味方か敵か分からないミステリアスな美女・上崎と出会う

調べれば調べるほど、背後に権力者や組織の影がうごめき、事件の闇が深まっていく中、萩崎は事件のカギを握るとおぼしき謎めいた美女・上崎(泉里香)にたどり着く…。

“普通の男”が闇にのみ込まれる…清張の世界を体現する小泉の熱演

これまでに何度も松本清張原作ドラマに出演してきた小泉

現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも、気品と哀愁を漂わせながら平宗盛の最期を巧みに表現するなど、独特の空気感を武器に存在感を発揮してきた小泉。

本作で演じる萩崎は、粉飾決算への加担を嫌い大手メーカーを自ら辞めた過去を持つ男。正義感は強いが、あくまでサラリーマンという“ごく普通の男”を、気負いを感じさせずナチュラルに体現している。

闇に巻き込まれ戸惑う主人公像が、良い意味で普通な小泉の雰囲気にハマっている

そんな一介のサラリーマンが事件の深みにハマってしまい、人生の歯車が狂い破滅へと向かっていく……という清張作品らしい物語が展開していく。小泉は思いも寄らぬ出来事や人物に翻弄(ほんろう)されていく萩崎の困惑や焦りを、眉をひそめた苦悶(くもん)の顔つきで表現。自身の魅力を内包した深みのある演技で巻き込まれ型の主人公に成り切り、清張作品特有のグレーな世界観を築き上げている。

社会性と普遍性を兼ね備え、見る者の心を揺さぶる清張の作品。連続ドラマWならではの攻めの作品づくりで際立ったその神髄を「連続ドラマW 松本清張『眼の壁』」で堪能してみてほしい。

文=ケヴィン太郎

インフォメーション

連続ドラマW 松本清張「眼の壁」

2022年6月19日(日)よりWOWOWプライムで放送開始
https://www.wowow.co.jp/detail/115842

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