
使い道いろいろ! ラップを使った防災ライフハック
地震、豪雨・豪雪、台風、火山噴火など、世界でも有数の自然災害大国である日本。防災意識が高く、学校などの公的機関、企業でもひんぱんに防災訓練が行われています。
ところが、家庭での備えはなかなか進んでいないのが現状。2025年に内閣府が行った調査では、ガスコンロなどの熱源、携帯トイレ等を「3日ぶん以上家庭に備蓄している」と答えた人は3割以下という結果に。備蓄品の収納場所に限りがあるなどの理由で、後回しにされてしまっているケースが多いようです。
最低限の備えは必要ですが、いざというときには“いま家にあるもの”をじょうずに活用することも大切。たとえば、どこの家庭にもある食品用のラップもそのひとつ。災害時には、何通りもの使い方で活躍します。
今回は、防災士でイラストレーターの草野かおるさんに、もしものときに役立つ“ラップを使った防災ライフハック”を教えていただきました。
(c)『おうち避難のためのマンガ防災図鑑』(飛鳥新社)
食品の保存や温めに欠かせないラップ。ラップならではの高い防水性、粘着性、柔軟性を備えた素材が、避難生活のときにさまざまな形で役立ちます。
「緊急時には、ラップもたくさんあればあるほどありがたい。普段購入するときには、100mなど長いものを選ぶとよいですね。最低でも3本ストックがあると安心。わが家では、4本は常備するよう心がけています」と草野さん。
同じ食品用ラップでも、その素材はさまざま。密着性が高く、素材にハリのあるポリ塩化ビニリデン。粘着性・伸縮性に優れた塩化ビニル樹脂。やわらかくて安価なポリエチレンなどが主流です。
「わたしは切り口がわかりやすいポリエチレン製ラップを愛用していますが、それぞれの使いやすさ、好みで構いません。いざというときに使えるよう、時間のあるときに家族でライフハックを試しておくと安心です」(草野さん)
100mの長尺ラップは大型スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどで販売されている
食品を包む以外にも、非常時にいろいろな使い方ができるラップ。草野さんから教えていただいたテクニックを、実際にやってみました!
備蓄品のなかでも、特に大切なのが水。農林水産省は、飲料用と調理用合わせてひとりあたり1日3L、最低3日ぶんの備蓄を推奨しています。避難時に食器にラップを巻いて食事をすれば、食器が汚れずにすむので洗う必要がなく、節水につながります。紙皿にもラップを敷けば何度も使えます。
けがや骨折をして、ガーゼや包帯がないときには代わりにラップを。傷口は必ず水できれいに洗い、消毒して患部が乾いてから清潔なラップを巻きましょう。骨折が疑われるときはダンボールや雑誌などを添え木にしてラップで一緒に巻き付けます。ただし、あくまでも応急処置。患部が悪化しないよう、可能な限り早めに医師の診断を受けましょう。
テーブルの上に、ラップを2枚十字に重ねて置く
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手首から手全体をラップで包む
避難生活が長引くとき、集団生活では感染症に特に気を配る必要があります。炊き出しでおにぎりを握るときなど、衛生面が気になる場面ではビニール手袋が役立ちますが、数に限りがあることがほとんど。そんなときは、ラップを手に巻いて手袋代わりに使いましょう。トイレで用を足すときや、掃除、ゴミの処理など素手を使いたくないときにも重宝します。
荷物をまとめたり、洗濯ものを干したりと、なにかと役に立つのがロープ。ラップでも簡単に作ることができます。長めにラップを切り、ねじりながらひも状にまとめるだけで簡易的なロープが完成。強度がほしいときには同じ長さのひもを3本作って三つ編みロープにすると、耐久性がぐんとアップします。
三つ編みにするときは、端をテープで留めるとやりやすい
避難所ではイスの背などにロープを結び、洗濯ものを干す
熱を逃がしにくいラップの性質を生かし、防寒グッズとしての使い方も。まず新聞紙を適当な大きさに折り、下着の上からおなかに巻きつけます。これだけでも温かいのですが、このうえからラップを巻くとさらに保温性が高まり、しっかり固定されます。夜間、足先が寒くて眠れないときは靴下の上からラップを巻くのもよいでしょう。
避難所や車中での避難生活では、体を動かす頻度が減って血栓ができやすくなり、エコノミークラス症候群の危険性が高まるとされています。そのリスクは通常の生活に比べて約200倍ともいわれ、避難生活において深刻な問題です。
「予防のためには、足踏みや、ふくらはぎ・太もものマッサージが有効。ラップの硬い芯を捨てずにとっておき、コロコロと転がしてマッサージすることも覚えておいてください」と草野さん。
また、自宅避難の場合はトイレの水が流せない状況になることも想定されます。排泄物やごみをいれた袋は、袋ごとラップでしっかり包むと、臭いを閉じ込めてくれます。
いつ襲ってくるかわからない災害に備え、ペットボトルの水、衛生用品や簡易トイレなど最低限の備蓄品はそろえたいもの。レトルト食品などの保存食、ラップ類は多めに買って備蓄しながら使う「ローリングストック」を心がけたいですね。
取材・文・写真=植木淳子 イラスト=草野かおる
教えてくれたのは
草野かおる
防災士、イラストレーター。出版社勤務後、イラストレーターとして独立。ふたりの娘が通う学校のPTA活動、地域の自治会活動を通じ、16年間にわたり防災勉強会、防災訓練などの活動に関わる。防災活動を生かし、2011年に発生した東日本大震災の数日後にブログにて発信を始める。多くのアクセスを集め、同年に初の書籍が発売。主な著書に『大切な「いのち」と「お金」を守るマンガ防災&防犯ブック』(ぴあ)など。