防災

震災でトイレが使えなくなったらどうする? 防災の専門家が教える簡易トイレの作り方&心得

目次

令和6年能登半島地震で被災されました皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

新年早々の1月1日に石川県を中心とする北陸地方を襲った令和6年能登半島地震。甚大な被害により今でも多くの人が避難生活を強いられており、さまざまな物資が不足するなど深刻な状態が続いている。

水などの不足に加えて、震災時に大きな問題となる一つがトイレのトラブルだ。今回の地震でも下水道の停電によりポンプが停止してしまったこともあり、多くの人々を悩ませている。

普段の暮らしから防災を意識しているという人でもなかなか目が届きづらいトイレの防災。今回は日本防災教育訓練センターの代表理事を務めるサニーカミヤさんに災害時の非常用トイレの作り方や心得について教えてもらった。

地震、大雨、洪水…自然災害でトイレに起こり得るトラブルとは?

まず知っておきたいのが、災害が発生した時にトイレに関するどのようなトラブルが起こり得るのかということ。備えあれば憂いなしということで対処法もあらかじめ知っておくことが大切だ。

「地震の場合は自宅の耐震設計や被災程度にもよりますが、平屋建てであれば停電や断水によって排せつ物を流せなくなる可能性があります。また2階以上であれば下水管が損傷すると排せつ物が漏れてしまい、下水による下階への水損被害が考えられます」(サニーカミヤさん)

マンションやアパートなどの集合住宅の場合は、これによって損害賠償など社会的責任を求められる可能性もあるそうだ。そういった被害を最小限にするために、地震の後に確認したいのが便器内の封水の状態。「水がない場合は下水管の破損を疑って応急的な排せつ対策を行うことが大切です」とのことで、とにかく何か異変があった際には自宅のトイレは使用を避けるべきだろう。

また大雨や台風などの場合は少し勝手が変わってくるそう。「水害の時には浸水ハザードリスクにもよりますが、し尿槽への浸水により排せつ物の逆流が起こり、トイレ、洗面所、風呂、流し台、洗濯機などすべての外へと通じる下水管から汚物が逆流してくる可能性があります」というから注意が必要。

そんな時はとにかく逆流を防止することが第一。「下水や排せつ物の逆流防止対策として、河川などが氾濫して浸水する前にすべての下水管につながる排水口に4キロ程度の重しでふたをしましょう。肝心のトイレは二重にした30リットルくらいのゴミ袋に3分の1ほど水を入れてビニール袋の口をしばり、10リットルの水のうを作って便器に入れてください」(サニーカミヤさん)

災害の種類に関わらず、排せつ物の漏えいによりノロウイルスなどの感染症のリスクも高まるとのことなので、トイレ周りの作業をする際は使い捨て手袋を使用するなど、衛生面には細心の注意を払いたいところだ。

近所のトイレの場所をチェック! 家のトイレが使えない時のための心得

では、自宅のトイレが使えない状況に陥った時にどうするべきなのだろうか?なるべくトイレを我慢するため水分を控えるべきだと考える人も多いかもしれないが、健康を損ねる危険性があるため、災害時でも水分はしっかり補給することが大事。

そのためにも抑えておきたいのが「近隣の公共施設やコンビニ、公園など自宅以外でトイレが使えるか、選択肢を増やしておくこと」とサニーカミヤさんが語るように、緊急時に使用できるトイレの場所。

自宅の近くはもちろんのこと、外出中の突然の災害に見舞われた時のことを考え、災害用トイレの設置場所を普段から調べるなど、日常の動線上にあるトイレのスポットを頭に入れておくことが重要だ。

また逆にすべきでないこととしてサニーカミヤさんが挙げてくれたのが、「封水がない便器で用を足すこと」や「屋外での排せつ」。後者は軽犯罪にあたる可能性もあるので、こちらも心得ておきたい。

簡単に実践できて衛生的! 猫砂を活用した簡易トイレの作り方

いざ、自宅のトイレが使用できなくなった場合には、近所のトイレも使用できない可能性も大。そこで覚えておくと助かるのが簡易トイレの作り方だ。今回は自宅のトイレと猫砂を活用した安価で実践しやすい方法をサニーカミヤさんに教えてもらった。

1.感染防止用手袋を着用する
2.便器に40リットルのゴミ袋2枚を重ねて袋状にかぶせる
3.猫砂5キロを便器のゴミ袋に入れて、便座を降ろす
4.排泄後は、排泄物の凝固部分だけをスコップですくい、臭わない袋に入れ、燃えるゴミとして捨てる
5.スコップで猫砂の表面を地ならしする
6.感染防止用手袋を適切な方法で脱着して破棄する
7.排せつ物の処理用ゴミ袋(30リットル)は二重にして捨てる

 

猫を飼っている家庭はもちろん、飼っていない人も猫砂はスーパーマーケットやホームセンターなどで簡単に手に入るものなので、万が一の時に備えストックしておきたいところ。猫砂がない場合は、猫砂の代わりにおむつやペットシート、新聞紙などを使用してもいいかもしれないが、衛生面を考えると猫砂がおすすめだ。

自然災害によって、ライフラインにトラブルが起こることも珍しくない昨今。水や食料品だけでなく、大きめの袋や断水の際に手を拭けるウェットティッシュなど、トイレのトラブルに対応できるものも常日頃から備えておいてほしい。

文=野宮ジュン

教えてくれたのは

サニーカミヤ

元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際救急援助隊所属。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4人を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500人を超える。 NHK他テレビ・雑誌などで防災・防犯コメントでの出演実績多数。年間330回以上の防災講演を行う。

 

 

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