
「新たな防災気象情報」で何がどう変わる?注意報や警報を正しく理解し災害に備える
いよいよ梅雨入り目前。その先の台風シーズンも視野に入れつつ、災害への備えをいま一度、見直しておきたいですね。そんななか、気象庁は5月28日より「新たな防災気象情報」の運用を開始します。河川氾濫、大雨、土砂災害、高潮の4項目について、危険度に応じて5段階の警戒レベルに整理。実際の災害時には、それぞれの危険度をあらわす数字とともに発令されます。
これまでの注意報や警報と何が違うのか、いざというときにどう行動すべきか、防災士の稲垣暁さんにお話をお伺いしました。
まずは、これまでの防災気象情報を見てみましょう。洪水に関する情報が3つに分かれ、そのうちの洪水害と大雨浸水害においてはレベル4が存在しないなど、複雑で分かりにくい体系となっています。
「さらに、大雨特別警報はレベル5なのに、高潮特別警報はレベル4となっており、“警戒”“危険”“警報”などの言葉の使い分けがあいまい。レベルをあらわす数字との関連性が統一されていません」と稲垣さん。
いっぽう、下の表は今月から運用が始まる「新しい防災気象情報」の基準です。
河川氾濫、大雨、土砂災害、高潮のすべての項目において、注意報はレベル2、警報はレベル3、危険警報はレベル4、特別警報はレベル5、と統一されました。
「危険警報のレベル4までに全員避難、という原則はこれまでと変わりません。ただし、高齢者や体の不自由な方がいる場合はレベル3までに避難を。住まいが河川や土砂災害危険箇所に近い高齢者や障がい者は、移動での困難が予想されることから勇気を持ってレベル2で避難をしておきたいですね。これらにあてはまらない方も、レベル2になった時点で、そのあとに警戒レベルが上がることを想定して心構えと準備をしておくとよいでしょう」(稲垣さん)。
レベル5は災害発生・切迫、レベル4は全員避難、レベル3は高齢者避難を意味します。最低限、「レベル4、もしくは危険警報という言葉はどちらも避難指示と同等」ということだけは必ず覚えておきましょう。
これらの警戒レベルは、原則として自治体が発表します。表は整理されて分かりやすくなりましたが、重要なのはその情報の受け取り方です。たとえば土日祝日だと、自治体のホームページが更新されないことも。その場合は気象庁のホームページやネットニュース、民間の気象情報会社、ラジオやテレビからの情報が頼りです。
「大雨や台風の到来が予想されていることが分かったら、それ以降は常に情報収集のためのアンテナを張っておくこと。近年は異常気象の影響で、ゲリラ豪雨など短時間での天気の急変がよく見られます。たぶん大丈夫だろう、といった楽観視は禁物。最悪の事態への備えが、命を守る行動につながります」(稲垣さん)。
ちなみに、暴風・波浪・大雪・暴風雪警報は、『新しい防災気象情報』の警戒レベルには相当しないことにも留意しておく必要があります。これらの警報も見逃さないようにしましょう。
いざというときにあわてないために、日ごろからのどのように備えておけばよいのでしょう。まずは、自宅や職場、家族が通う学校などがある場所を自治体のハザードマップでチェック。どのような災害の可能性があるかを把握しておきます。
たとえば、国土交通省が運営する「重ねるハザードマップ」では、洪水、内水氾濫、高潮、土砂災害など複数のリスクを重ね合わせて確認可能。浸水については、「1階の天井まで(3m)」、「2階の屋根以上(5~10m)」など、具体的な深さが色分けで表示されます。また、NHKのサイト上のハザードマップでは、全国の最新データが閲覧できます。
「洪水警報が出たとしても、丈夫なマンションの高層階や、オフィスビルにいる場合は避難せずにその場にとどまったほうが安心な場合もあります。ただし浸水の被害がなくとも、断水や、トイレが使えなくなることを想定しておきましょう」(稲垣さん)
これからの季節、河川氾濫や大雨に備えて以下のようなものを準備しておくと安心です。
蓄電池
台風や大雨では停電の可能性が高まります。蓄電池があればスマートフォンをつないで、安否確認や情報収集が可能に。また、ある程度の容量があるものだと扇風機も動かすことができ、熱中症予防に役立ちます。新たに蓄電池を購入する場合は、いざというときにどういう使い方をしたいかを想定して容量を選びましょう。
水
水害と断水は結びつきにくいかもしれませんが、昨年11月、沖縄県では大雨の影響で導水管が破裂。広範囲にわたり大規模な断水が発生しました。これ以外にも、土砂災害によってダムが被災し、断水が起こるケースもよく見られます。ミネラルウォーターなどの備蓄とともに、台風が予想される場合はあらかじめ風呂に水を貯めておくなどの対策が有効です。
カセットコンロ
特に自宅がオール電化の場合、停電が起こるとお湯を沸かすことすらできなくなってしまいます。コンロとともに、ガスボンベも忘れずに備蓄を。
連絡先一覧
大規模な災害に見舞われた場合、家族や知人同士で安否確認をしたくとも、スマートフォンの電源が入らずに連絡先すら分からない…という事態が見受けられます。避難所に設けられた臨時電話を利用することも視野に入れ、大事な連絡先はメモを取っておきましょう。
「新しい防災情報」と同時期に、新たに運用が開始されるのが「線状降水帯直前予報」です。線状降水帯とは、発達した積乱雲が次々と発生することで、数時間にわたり同じ地域に線状(長さ約50~300km、幅約20~50km)の強い降水をもたらす雨域のこと。ゲリラ豪雨とはまた異なるしくみで集中豪雨の原因となり、土砂災害や浸水を引きおこす可能性もあります。合わせてチェックしておきましょう。
「これからの時期は、台風などによる暴風警報にもじゅうぶんな注意を。万が一の災害に備え、日ごろから近所の人と連携しておくことも大事です」(稲垣さん)
取材・文=植木淳子 イラスト=ふじいまさこ
教えてくれたのは
稲垣暁
防災士(災害ソーシャルワーカー、防災教育指導者)。社会福祉士。「一般社団法人 災害プラットフォームおきなわ」事業統括。
1995年に発生した阪神淡路大震災で被災後、現地で新聞社勤務を続けながら再生活動に携わる。沖縄に移住後は自身の被災体験をもとに、県内だけでなく県外の多くの被災地で災害支援活動を続ける。