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のんが初劇場長編監督映画で挑戦した演出「リボンで感覚的に伝われば」

女優だけでなく、“創作あーちすと”としても活動する、のん。そんな彼女の初劇場長編監督映画『Ribbon』が2月25日(金)から公開されることが決まった。この作品は、のんがコロナ禍の最初の緊急事態宣言中に抱いた思いが集結したもので、彼女は脚本、監督、主演の3役を担っている。物語の主人公は、のん演じる美大生の浅川いつか。コロナで通学すらできなくなり、自宅でも作業する気になれない。鬱々とした日々を過ごしながら、自分なりの出口を見つけていく青春ストーリーとなっている。

今作の大きな特徴は、リボンがいつかの感情を表しているところ。樋口真嗣監督、尾上克郎監督がリボンの特撮チームとして加わり、“創作あーちすと”のんならではの作品に仕上がっている。

(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ

――どんな思いから創作がスタートしたのでしょうか?

「コロナ禍でエンターテインメントや芸術が、不要不急に入れられているのが悔しいと感じたところから始まりました。今までも、この仕事がなかったらどうしていたか分からないなと思うことがありましたが、ここまでエンタメや芸術が好きだったんだ、やりたかったんだということを、制限されたからこそ実感することができた。それで、どんな人を主人公にするのがいいかなと思った時に、自分の憧れだった美大生がいいなと思い、コロナ禍の美大生の方々の状況を調べ始めたんです」

――そこで映画のテーマとなる、美大生の言葉に出会ったんですね。

「はい。卒業制作展ができなくなって、自分の作品がゴミのように思えてしまったと話している方がいて、その言葉に衝撃を受けて、脚本を書き始めました」

――演出をする際に心掛けたことは?

「伝えなきゃ!ということです。言葉で伝えることがあまり得意ではないので、絵に描いたり、イメージボードを作ったりして、スタッフの皆さんに伝えました。今回はリボンが出てくる特殊な作品なので、どのぐらいのファンタジー感なのかが伝わりにくかったので。普通のシーンの中にリボンをまとっている人がいて、違和感を生み出したいということをお伝えしました」

――俳優陣への演出で意識したことは?

「最初に衣装合わせや本読みをした時に、テーマをお話ししたりはしましたが、現場では結構お任せだったと思います。私自身、無造作にやった時の方が、感情が動いていたなと感じることがあったので、気持ちの流れや動きはリハでやって、本番はお任せにしました。スタッフの皆さんに伝える対策はしていましたが、演者の皆さんに伝える対策はしていなくて、ヤバい!と思って、頑張ってしゃべりました(笑)」

――撮影の際、監督の自分と俳優の自分がぶつかり合うことはありませんでしたか?

「なかったです。YouTubeでの短編映画『おちをつけなんせ』に出演していただいた桃井かおりさんに、『主演と監督、どっちもやるのは大変じゃないですか?』と質問した時、『楽ちんよ』と答えられたことがあって。『自分と同じ脳みそを持った味方が1人いるということは、すっごい楽なことよ』と。私は楽ちんとはいかなかったですが(笑)、こう撮りたいということを、いつか役の人(自分)は分かっているから、そこに向かって真っすぐ向かっていくという感じでした。でも、監督としてどういう画を撮りたいかとか、メッセージにばかり頭がいっていたので、撮影前にいつかのバックボーンなどを構築し直しました。いつも役者として撮影に入る前にやっていることなんですけど、自分で脚本を書いているから分かった気になってしまっていたので、もっと深いところを考え直しました。設定は決めてあるけど、気持ちの細かい部分は役者の仕事だから、そこは頭を切り替えてやりました」

――いつかの感情をリボンで表したのは、なぜですか?また、どうやって撮ったのですか?

「いつかは鬱々としているし、落ち込んだりもしちゃう。でも、それをハードなまま出したくなかったので、リボンに表現してもらうことで、重たさが感覚的に伝わればいいなと思いました。樋口監督、尾上監督とは何度もミーティングをして、それで(リボンは)CGじゃないかもしれないねとなり、リボンの特撮をして合成することになりました。1本のリボンで表現しているものはほとんど水の中で撮ったのですが、同じ動きが二度とできないので、ここまでは良かったのに…ということもありました。それから、先にリボンをはわせて、引き抜いたものを逆再生したり…。そうすることで、特撮だからこそ出せる空気感が出せたと思います。キャストの皆さんは素晴らしかったですし、スタッフの皆さんにもすごく支えられ、いい作品になったなと思います」

――最後に、のんさんの「家のこだわり」を教えてください。

「物をしまう時に割り振ることです。前はいろんな物を1つの箱にしまっていたので、この箱は靴下、この箱はお薬と、別々にすることを心掛けています。あと、大切な物は見えるところに置いていくようにしています。しまうとなくなってしまうので、見えるところに。アクセサリーはすぐになくしてしまうのであまり着けなかったんですけど、玄関付近に飾るように置くようになったら解決しました(笑)」

取材・文=及川静 撮影=大川晋児
ヘア&メーク=菅野史絵 スタイリスト=町野泉美
衣装協力=kudos、SHINYAKOZUKA、atelier ST, CAT

インフォメーション

映画『Ribbon』

2022年2月25日(金)より、テアトル新宿ほかロードショー
監督・脚本:のん
出演:のん、山本リオ、渡辺大知、小野花梨、春木みさよ、菅原大吉

のん

のん●1993年生まれ。兵庫県出身。脚本、監督、主演を担うのは、短編映画『おちをつけなんせ』(2019年)に続いて2本目。2月25日(金)公開の『Ribbon』は、第24回上海国際映画祭に特別招待作品としてGALA部門に選出され、ワールドプレミア上映のチケットはわずか5分で完売した。

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