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【週末エンタメ】伊坂幸太郎原作を大胆アレンジ!ブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』でさく裂するハリウッド的“珍妙な日本観”

目次

日本の新幹線を舞台に繰り広げられる殺し屋同士のバトルを、ブラッド・ピット主演で描いた『ブレット・トレイン』が2022年9月1日(木)より公開される。ハリウッドが描く日本といえば、日本人から見るとどこかズレている珍妙な作品も多数。この『ブレット・トレイン』もまた、やり過ぎた日本描写が楽しい一作となっている。

原作は伊坂幸太郎の小説!世界一運のない殺し屋を描く本格アクション

新幹線を舞台に殺し屋たちの殺し合いが繰り広げられる

累計発行部数300万部を超える伊坂幸太郎の殺し屋小説シリーズの第2弾『マリアビートル』を原作に、『デッドプール2』(2018年)などのアクションシーンで知られる元スタントマンのデヴィッド・リーチ監督が映画化した本作。『ファイト・クラブ』(1999年)など多くの作品で、リーチ監督がスタントダブル※を担当してきたブラッド・ピットが主演を務めている。

※スタントダブル…危険なシーンや高度なスタントに使用される熟練した代役

ブラッド・ピット、サンドラ・ブロックといったキャストの豪華さも見どころ!

東京発、京都行の超高速列車“ゆかり”に乗り込み、ブリーフケースを奪う簡単な仕事を請け負った運の悪い殺し屋レディバグ(ピット)。マリア(サンドラ・ブロック)の電話ナビゲートに従い、早速ブリーフケースを見つけ、品川駅で新幹線を降りようとしたところ、復讐心を燃やすメキシコ人の殺し屋ウルフ(バッド・バニー)に襲われてしまう。

主人公のレディバグはなぜか殺し屋から命を狙われるハメに…

なぜ自分が狙われるのか?全く身に覚えのないレディバグだったが、その後も腕利きの殺し屋コンビ・タンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)&レモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)、毒の使い手・ホーネット(ザジー・ビーツ)ら、なぜかこの新幹線に乗り合わせた個性豊かな殺し屋たちと闘うことになってしまう…。

ネオン、アニメ、チャンバラ…随所に盛り込まれた極端な日本観

本作ではキャラクターの設定やストーリーなど、原作から大幅なアレンジが加えられている。例えば、物語にはヤクザ同士の因縁が盛り込まれ、どこか東京五輪マスコットをほうふつとさせる“モモもん”という名の謎のテレビ番組キャラも登場、さらに新幹線の終着点は原作の盛岡から京都に変更されており、その結果、富士山がスクリーンにデカデカと映し出されていく。

ギラギラのサイバーパンク的な描写は、クールで魅力的だ

そしてなによりもぶっ飛んでいるのが、極端なまでにデフォルメされた日本描写の数々。冒頭でレディバグがぶらつく東京の街並みは、ネオンや看板がガビガビにきらめく、まさに電脳都市といったテイストになっている。

どこか不気味な雰囲気が漂う謎キャラ・モモもん仕様の車内

また列車の内部も、極彩色のライトが怪しげに光る車両があれば、鶴のあしらいがラッピングされている車両、謎キャラ・モモもん仕様の車両まで、和、ネオン、アニメ…と日本のイメージがてんこ盛り。思わず「こんな列車、落ち着けるか!」とツッコミたくなるような空間だ。

しかし元をたどれば、殺し屋たちが、時には列車の外に投げ出されそうになりながら、時速350キロで走る新幹線で闘うという、ウルトラ浮世離れした本作なので、これくらいやり過ぎていたほうが逆に違和感がないのかもしれない。

殺し屋が読む本にまで日本要素を盛り込む徹底ぶり

般若面をかぶる悪役のボス・チャンバラバトル…など、ケレン味にあふれたジャパニーズ描写の数々に加え、殺し屋のひとり、プリンスが日本的な精神を学んだ暗殺者を主人公としたトレヴェニアンの小説『シブミ』を読んでいるなど、見落としてしまうような細かなところまで日本的要素で埋め尽くすこだわりぶりは、もはや圧巻だ。

真田広之らが出演!キャスティングから見える日本へのリスペクト

車両内のさまざまな表示や文章もうれしいポイントだ

ここまで極端な日本的要素で埋めつくされているにも関わらず、日本へのリスペクトをしっかりと感じることができる。ブラッド・ピット、サンドラ・ブロックをはじめとする豪華な顔触れと並んで、ハリウッドで活躍する日本人、日系人俳優も数多く出演している。

アンドリュー・小路が演じる、ダークな雰囲気をまとった男・キムラ

真田広之は年長者という役どころで圧倒的な存在感を放っている

中でも、息子をビルの屋上から突き落とした犯人を追って列車に乗ったアンドリュー・小路ふんするキムラと、真田広之演じるその父・エルダーは、ともに物語の鍵を握る重要人物。アクションではいかにも武士道的な渋い一面を覗かせたかと思えば、意外にチャーミングな顔も持っているなど、画一的な日本人ではなく、しっかりと個性のある人物として描かれている。

さらにドラマ「ザ・ボーイズ」などで活躍する福原かれんが添乗員役で出演しているほか、車掌役のマシ・オカなど脇役にまで日本語を話せる俳優をそろえる徹底ぶり。特にマシ・オカは、「HERO」でそれまでの日本人のステレオタイプを打ち破った俳優であり、キャスティングからもその意図を感じることができる。

スタントマン出身監督ならではの本格的なアクションなど見どころ満載!

騒々しい都会の街並みから、「いつの時代かな?」と首をかしげたくなるような渋みのある古都の風景まで、オリエンタルな日本のイメージを意図的に盛り込むことで突飛な物語を成立させている本作。ヘンテコな描写の数々を楽しめるという点では、日本人こそチェックすべき一作なのかもしれない。

文=ケヴィン太郎

インフォメーション

『ブレット・トレイン』

2022年9月1日(木)より全国ロードショー
https://www.bullettrain-movie.jp/

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