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【週末エンタメ】スタイリッシュな恋愛映画で一世を風靡!香港の巨匠ウォン・カーウァイの世界観

目次

香港を代表する映画監督として知られるウォン・カーウァイ。スタイリッシュな恋愛映画を数多く手掛け、90年代に一世を風靡(ふうび)し、日本ではミニシアターブームを牽引してきた。そんな彼の作品を4Kレストアした『WKW4K ウォン・カーウァイ4K 5作品』が、2022年8月19日(金)より全国順次公開中だ。ここではそんなカーウァイ監督の独自の世界観をひもといていきたい。

香港映画の巨匠として知られるウォン・カーウァイ監督 (C) 2019 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.

時代の狭間で繰り広げられるおとぎ話のような恋愛模様

ブルース・リーに代表されるカンフーや裏社会を描くノワール、またジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポーらによるコメディータッチのアクションで一時代を築いてきた香港映画。そんな中でカーウァイ監督は、デビュー作となった『いますぐ抱きしめたい』(1988年)をはじめ、キャリアを通して恋愛模様を描き続けてきた。

トニー・レオンとレスリー・チャンが共演した『ブエノスアイレス』 (C) 1997 BLOCK 2 PICTURES INC. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

九龍の雑居ビルを舞台に2組の男女の恋模様がオムニバス形式で描かれる『恋する惑星』(1994年)。もともと『恋する惑星』の一部として構想された姉妹作的な『天使の涙』(1995年)。アルゼンチンを舞台に男性同士の切ない恋愛が繰り広げられる『ブエノスアイレス』(1997年)。互いのパートナーが不倫関係にあることを知った隣人同士が引かれ合っていく『花様年華』(2000年)。そして『花様年華』の主人公・チャウの“その後”が紡ぎ出される『2046』(2004年)――今回上映される5本もすべて恋愛を描いている作品だ。

木村拓哉が出演したことでも話題を集めた『2046』は『花様年華』のその後の物語だ (C) 2004 BLOCK 2 PICTURES INC. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

擦れ違い、不倫のような禁断の関係、男性同士の恋までさまざまな形の恋が描かれるカーウァイ作品の中で共通しているのは、複雑な歴史を持つ香港ならではの時代の空気が感じられるという点だ。

例えば、『恋する惑星』は多民族が暮らす香港らしさの象徴ともいえる重慶大厦で撮影されており、香港返還に向けた混沌とした空気感が捉えられている。さらに『ブエノスアイレス』では、香港返還数カ月前の時代の揺れ動きが、恋愛模様と重ねられているように感じられる。

『恋する惑星』は公開当時、ミニシアターブームを牽引するほどのヒットを記録した (C) 1994 JET TONE PRODUCTIONS LTD. (C)2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

マギー・チャンとトニー・レオンが引かれ合う男女に扮した『花様年華』 (C) 2000 BLOCK 2 PICTURES INC. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC.ALL RIGHTS RESERVED

また『花様年華』の背景となっている1960年代は、イギリスからシンガポールが独立、中国では文化大革命が起き…と、香港にとっても大きな影響が及ぼされた時代だった。そんな激動の時代を背景に繰り広げられる恋はどれも刹那的で、どこかおとぎ話のような印象を覚えてしまう。

クリストファー・ドイルのスタイリッシュな映像美と、引き立て合う音楽

時代性に加え、カーウァイ作品のどこか不思議な手触りの要因の一つになっているのが、美しく幻想的な映像だろう。『欲望の翼』(1990年)からほとんどの作品をクリストファー・ドイルが撮影監督を手掛けており、このたび上映される5作品もすべて彼が担当している(一部、共同の撮影監督がいる)。

青みがかった色彩もウォン・カーウァイ監督の特徴の一つ(『天使の涙』) (C) 1995 JET TONE PRODUCTIONS LTD. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

手持ちカメラによる撮影やスローモーションを多用した浮遊感あふれるショット、香港の都会的でどこか無機質な雰囲気を表現した「青」とそんな街で愛し合う2人を描く「赤」など、コントラストの極端な色彩によって斬新かつスタイリッシュな画を作り上げている。

『ブエノスアイレス』では、ラテンミュージックが劇中で数多く使用された (C) 1997 BLOCK 2 PICTURES INC. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

カーウァイ作品は音楽の使い方も巧みで、『恋する惑星』に代表されるように、登場人物の心情とリンクするようなポップミュージックをふんだんに使用し、まるでMVのようなイメージ先行のカットが随所で挟み込まれていく。スタイリッシュな画作りと音楽が互いを引き立て合うことによって、恋の予感や余韻を見事に演出してきた。

木村拓哉も参加した『2046』は18年ぶりに公開!生まれ変わった4Kレストア

カーウァイ監督ならではの映像で紡がれてきた恋愛映画。今回のレストアは監督自らの手で4K化されており、監督が「単なる焼き直しではない」と語っているように、新たな作品として生まれ変わっている。

トニー・レオンはウォン・カーウァイ作品の常連の一人(『花様年華』) (C) 2000 BLOCK 2 PICTURES INC. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC.ALL RIGHTS RESERVED

映像のアスペクト比を例に出すと、『恋する惑星』と『花様年華』はビデオ化の際に1.85:1に修正されたが、監督のお気に入りだという劇場公開時のサイズ1.66:1に復元。『天使の涙』はスタンダードサイズから、もともと意図していたというスコープサイズに変更されている。

殺し屋や口の利けない宿屋の息子など5人の男女が織り成す恋を描いた『天使の涙』 (C) 1995 JET TONE PRODUCTIONS LTD. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

サウンド面でも『恋する惑星』は公開当時存在しなかった5.1chに音声を再構成。『花様年華』にはリミックスが施されている。映像と音楽が印象的なカーウァイ作品だけに、新たな印象を与えてくれるはずだ。

映像のきれいさに加え、アスペクト比やサウンド面などもレストアされている (C) 2019 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.

そんな世界観の中に登場するのは、トニー・レオン、金城武、レスリー・チャン、マギー・チャン、フェイ・ウォン、チャン・ツィイーといった中華圏の美しい映画スターたち。また、木村拓哉も参加した『2046』は、2004年の初公開以来18年ぶりの全国公開とあって、大いに話題を呼んでいる今回の“4Kレストア”プロジェクト。彼らが見せる演技にももちろん注目したいところだ。

文=ケヴィン太郎

インフォメーション

『WKW4K ウォン・カーウァイ4K 5作品』

2022年8月19日(金)より全国ロードショー
https://unpfilm.com/wkw4k/

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