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【週末エンタメ】女優・有村架純の新境地!主演映画『ちひろさん』で表現した“心のままに生きる”魅力的な女性像

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NHK大河ドラマ「どうする家康」では “悪女”と語り継がれる徳川家康の正室・瀬名に扮するなど、近年、幅広い役柄に挑み、高い実力を発揮している有村架純。彼女が自然体でいながらもミステリアスという不思議な女性を演じ、抜群の存在感を放っている映画『ちひろさん』が2023年2月23日(木・祝)より公開される。

熱狂的支持を集める安田弘之の漫画『ちひろさん』が映画化

ナチュラルかつ大胆な演技で新境地を見せている有村架純
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

原作はテレビドラマ化もされた『ショムニ』などで知られる安田弘之による、熱狂的な支持を集める同名漫画『ちひろさん』。

安田作品といえば『ショムニ』に代表されるように、会社という組織や社会の“中心”から外れ、世の中からは“変人”のレッテルを押されながらも、自分の価値基準に従い、真っ当にたくましく生きる女性が描かれてきた。

風俗嬢として生きてきた主人公・ちひろの、その後の暮らしがつづられる『ちひろさん』もまたしかり。つかみどころのない変わり者の女性の生きざまや、心の傷や悩みを抱える周囲の人たちとの交流が映画でも描かれていく。

海辺の小さな街にあるお弁当屋で働くちひろさん。元風俗嬢であることを隠そうともせず、自分に色目を使う男も、無口なホームレスの老人も、憎まれ口を聞く子どもたちとも、分け隔てなく接している。そんな彼女の周りには、息の詰まる家族関係に悩む女子高校生や母親の愛情に飢える小学生、父との確執を抱える青年など生きづらさを抱える人々が自然と集まってくる。

ちひろさんの周りにはさまざまな事情を抱えた人たちが自然と集まってくる
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

そんな彼らが孤独と向き合いながら人生を進んでいけるよう、一緒にご飯を食べたり、言葉をかけたり、時に優しく、時に強く背中を押していくちひろさん。彼女もまた交流を通じて、自らの孤独と向き合い、少しずつ変わっていく…。

日本映画のいまをリードする今泉力哉監督、くるり・岸田繁ら、才能あふれるスタッフが集結

今泉監督が一風変わった人間関係を繊細に紡いでいく
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

このヒューマンドラマでメガホンを握るのが、ハイペースに映画を撮り続け、『愛がなんだ』(2018年)、『街の上で』(2019年)など多くの良作を生み出し、いま最も注目を集める監督の一人、今泉力哉。

今泉監督といえば、どこにでもいるような普通で不器用な人のありようを、淡々と、それでいて決して否定しない優しさを含んだ視点から描いており、まさに『ちひろさん』は相性抜群ともいえる題材。本作でも押し付けがましくなく、突き放し過ぎない絶妙な距離感で、ちひろさんを中心とする不思議でチャーミングな人間関係をスクリーンに浮かび上がらせている。

持ち前の透明感を生かし、ちひろさんになりきっている有村
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

また過去には “突然撮影が休みになったら、俳優はどう過ごすのか?”という妄想を描くモキュメンタリー「撮休」シリーズの「有村架純の撮休」で有村とタッグを組んだ今泉監督。『ちひろさん』でも、有村を心のままに生きる女性としてドキュメンタリーのようなタッチで活写している。

加えて脚本にはこれまでに『愛がなんだ』、『かそけきサンカヨウ』(2021年)などで今泉監督と共同脚本を務めてきた盟友・澤井香織が参加。主題歌「愛の太陽」を今泉監督が敬愛するバンド・くるりが書き下ろし、岸田繁が劇伴音楽を担当。人生に寄り添うような優しさと力強さが同居した美しいサウンドと言葉で作品をサポートする。

さらにお弁当をはじめ、作品を彩る食の数々を手がけるのは、『南極料理人』(2009年)、「深夜食堂」シリーズなどで知られるフードスタイリスト・飯島奈美。実力者ぞろいの盤石の布陣となっているのだ。

有村架純が豊かな感情表現で浮かび上がらせるリアルな“ちひろさん”像

真剣な顔を見せたかと思えば、おどけたり、軽やかな演技も光る
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

そんな才能が集結した本作で、何よりも目を奪われてしまうのが有村架純の演技。イメージとかけ離れた役に挑みながらも、常識にとらわれない自由な空気感とそこはかとない寂しさを漂わせた女性をリアルに体現している。

持ち前の透明感に加えて、鼻の穴を広げてまでお弁当を味わう気持ちのいい食べっぷり、少し粗野なせりふ回しに、底抜けに明るい笑顔など豊かな感情表現が満載。一人漂うように人生を謳歌するちひろさんになりきり、どこかおとなしそうというパーソナルな印象を覆す姿はさすが女優だ。

さらには時折のぞかせる、悟ったような神妙な顔つきや沈み込んだ際のどんよりとした声のトーン、無防備な色っぽさまで多彩な演技で、ちひろさんというキャラクターに深みと人間味をもたらしている。観賞後には、不思議とまたちひろさんに会いたくなる、そんな気持ちにさせられてしまうのだ。

若葉竜也は父親と確執を抱える青年を演じる
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

加えて、脇には今泉作品の常連である若葉竜也や、独特の空気感で引っ張りだこのリリー・フランキー、ベテラン女優の風吹ジュンといった実力派がズラリ。そんな彼らと相対する際の有村が相手によって使い分ける表情にも注目だ。

相手によって異なる顔をのぞかせる有村の演技もリアル
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

リアリティーを感じられる演出と演技によってどこかうさんくさくなりそうなキャラクターに命を吹き込んでいる『ちひろさん』。“普通”とされる道から外れながらも、ありのまま生きることをさりげなく肯定する物語は、登場人物たち同様にどこか胸が軽くなる、そんな気持ちにさせられるかもしれない。

文=ケヴィン太郎

インフォメーション

『ちひろさん』

2023年2月23日(木・祝)より全国ロードショー
作品詳細はこちら

 
 

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